理想は、『そこに住んでいる家族が思い浮かぶ家』
2012年7月2日20:31 [6.ちょっとひと息]
注文住宅は施主の希望でつくるものだが、施主は建築の専門家ではない。
では、施主は条件を語るだけなのか。こんな疑問に対して、中郷氏は
「建築家の仕事は、施主の個性を住宅に反映させることにある」と語る。
目指すのは、家族の姿が思い浮かぶような家だ。
──2007年の設立からずっと芦屋で活動されていますね。
神戸大学で建築学を学んでいたとき、阪神大震災が起きて、私も被災しました。
そのときの想いを忘れないためにも、創業から芦屋にオフィスを構えています。
災害の悲惨さを忘れず、安全で、長く残る建物をつくっていこうとの想いからです。
──そんな想いを踏まえて今、目指している家の姿というと、どういったものですか。
ひとことで言うなら「そこに住んでいる家族が思い浮かぶ家」ですね。
たとえば、通りがかった人が建物を見て
「こんな家族が住んでいるのかな」と想像できるような。
住んでいる人の内面や人格、そして家族全体の思い入れなどが、
外からも感じられるような家をつくりたいと、いつも考えています。
──施主の気持ちが大事だということでしょうか。
会社は社長以上にはならない、とよく言われるように、
家も施主以上にはならないものです。
だから、
施主も施主として家づくりの中でステージを登っていってもらうことが大切です。
打ち合わせでは、まず、表面的な言葉だけではなく、
時間をかけながら心の声を聞き、
本当に住み手が欲しいものを探っていく。そして、何のために家を建てるのか、
家族がどういう暮らしをするための家なのかまで、施主さんと一緒に考えていく。
その上で、つかめてきた家族の個性に、
ロケーションや土地の特性といった敷地の魅力を掛け合わせ、
プランを作るわけです。
──打ち合わせで気をつけていることはありますか。
こちらとしては要望を100%受け止めた上で、
デザイン性、機能性ともに最高だと思うプランを作って
提案するのですが、施主と話し合うと、それがいとも簡単に崩れることがよくあります。
しかし、それも住宅というものの面白さだと思っています。
他人から見れば少し使いにくかったりしても、
家族が気に入っているものが一番、ということもあるのです。
中郷洋次(JIHLAVA & Co.)
1973年 兵庫県あわじ島生まれ
1996年 神戸大学工学部建築学科卒業
2007年 株式会社 イフラヴァ 設立